謎の男 荒野に現る

 

 燦々(さんさん)と照りつける太陽、荒野に点々と育ったサボテンは、青々して立派だ。そこにたたずむ男の眼には、その景色が広がっている。男の名は『ミネ―タ』それ以外はわからない。記憶がなくなっているのだ。今は自分の記憶を捜し出す旅の途中である。手がかりは、自分の名と身につけていた。ボロボロの茶色に近い色をした服や帽子、そして、左右の腰に携えた二丁のコルトである。そのコルトの製造番号を突き止めたミネ―タは、北東の町『ルティス』に向かっている途中であった。目的の町は、残り10キロ弱、ミネータは馬を急がせた。

 ミネータは荒野の道なき道を駆け抜けて行く。

 「ジョン、今日もいい調子だ!」

 ジョンというのは、ミネータが今乗っている愛馬の名である。前に訪れた町で買い求めたのだが、こいつがなかなかの良馬である。鬣が長く目は漆黒で、引き締まったボディーをしている。

 と、こんな説明をしている間に、ルティスは目と鼻の先まで来ていた。周りは岩山が多く荒野の荒くれどもが、隠れ住むにはもってこいの環境であった。

 「STOPだ。ジョン!」

 ミネータは、ルティスの目前にして急に馬を止めた。町の方から、なにやら数十頭の馬が近づいてくるようだ。乗っているのは、見るからに荒狂った賊である。おそらく町で一暴れした後の帰り道といったところだろう。ミネータはジョンに合図して賊の方に馬を向けた。

賊はミネータに気がつくと、馬をとめ、ミネータを鋭くにらみつけた。

 「おぅ!そこのダサ服の野郎、人が気持ちよく走っているっていうのに、のん気につっ立ってんじゃなね〜よ!!」

 「・・・・・」

 「ビビッて口も聞けないのかよ。」

 そう言うと賊どもは馬を下りて近づいてきた。ミネータはそれに応えるように馬から下りた。

 「お前、覚悟はできてんだろうな?!」

 賊のリーダーらしき男が荒い声をか、鋭く睨みつけてきた。

 「ふふっ」

ミネータは、賊がよく見えるように、帽子を少し上げ、微笑を浮かべると、腰のコルトに手をかけた。

 「テメー、何笑っていやが・・・・」

 (BANG!!)

 次の瞬間、目の前では賊のリーダーが宙を舞っていた。(不意打ち。汚ネー)

 「お喋りの好きなやつだ。」

 賊の下っ端達は、しばらく言葉を失った。 下っ端たちには、ミネータがいつの間に銃に手がかかったのかが、まったく分からなかったのだ。

 「こっ、この野郎!兄貴の仇。」

 下っ端達は、いっせいに銃に手をかけた。

 (BANG BANG BANG・・・)

 ミネータは賊どもが銃を手にする間に、もう片方のコルトを抜くと、横跳びし、転がりつつ銃を連射した。

 全ての弾を撃ち終わり、静寂が広がる。

ミネ―タは、立ち上がり服についた土を手で叩き落とした。そして振り返ったとき、そこに立っている者は誰一人といなかった。

 「命は大切にな。ベイビー。」

 帽子を深く被り直すと、ポケットからタバコを取り出し、火をつけた。青い空に一筋の白煙が高々と舞い上がっていた。

 

               To Be Contined     

次回予告

 荒野の荒くれ野郎をあっという間に倒してしまったミネータ。次の町に行こうとするミネ―タは、賊の奪ったものをジョンに載せ、走り出した。

 明日には何が待っている。走れミネ―タ!

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