らーめん

 

仕事帰りに屋台のラーメン屋に行ったことはありますか?

 

 

「おやっさん、味噌ラーメン。」

注文をするとすぐに屋台のおやっさんはどんぶりを渡してきた

「あいよ。」

俺はどんぶりを受け取るとすぐに食べ始めた。

「おいおい。そんなに焦って食わないでくれよ。せっかく作っ

たのに、もう少し味わってくれ。」

そんなおやっさんの言葉を無視し、俺はあっという間にラーメ

ンを平らげた。

「……うまいな。この味、どうやって作ったんだ。」

ものの2分程度で食べたにもかかわらず、舌に纏わりつく味。

それが麺の味なのか、それともスープの味なのかは分からない

。だが、その味は不思議にも俺の食欲をさらにそそり立たせる

ものとなった。

「……それは企業秘密というやつだ。教えられんな。」

「……どうしてもだめか。」

「ああ。どうしてもだめだ。」

しかし、すでに俺はこのラーメンの虜となっていた。だめだと

言われ、はいそうですかと諦められる筈がない。教えてもらえ

ないのなら、自分で確かめるまでだ。

「おやっさん。ラーメンもう一杯くれないか。」

屋台のおやっさんは一度渋い顔をしたが、拒否することなく、

これまたすぐに二杯目を渡してきた。

先ほどとは違い、ゆっくりと味を確かめながらラーメンを食べ

ていく。

(……あの味、麺じゃないな。だとすれば、スープのほうか。

どんぶりを傾け、一口すする。

「うまい!」

その味は、先ほどよりもより濃厚な味になっていた。

あの一瞬でここまで味が濃縮するとは思えない。しかし、おや

っさんが何かをした気配もない。

それではいったい何が……

「ん?」

ふとスープを眺めているとひとつの疑問が浮かんだ。

どんぶりの中にあるアカイスープ。

しかし、何度味わってみても辛さは感じない。

そして、この舌に粘りつくかのような味。

「おやっさん。これって、もしかして……」

「分かっちまったか。今後は一人一杯限定にするか。」

そうおやっさんは呟き……

「だしはおまえの思ったとおり、人肉だよ。」

そう、答えた。

「そうそう、三杯目を出す気はないから、支払いでいいよな?

その声に、背筋が凍る。

「い、一杯、いくら……なんだ?」

「そうだな。腕一本ってところか。おまえは二杯食ったから、

両腕を貰うとするかな。」

そう言って、おやっさんは隠し持っていた中華包丁を取り出し

た。

「そうそう、食い逃げが出来るとは思うなよ?」

その声で、俺はあたりを見渡した。

いつの間にか、俺は片腕のない人々に囲まれていた。

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