WHITE OUT

 

 

長かった冬もようやく終わる。

 

 暇つぶしに描いた絵には、幼い頃に見た天使と、どこまでも

青い空。流れ行く雲がどうしても描けなくて、とうとう2時間

もこれに費やしてしまった。

 

「ぷっ」

 

 それにしてはあんまりの出来だ。羽のながさが双方で違って

いる。顔からはどこか暗い感じが出ている。空も、これでは曇

っているのではないかというくらい線が入っている。

 

 でも・・・

 

 これを見ていると何だか懐かしい。今となっては名前さえ忘

れてしまったけど、それでも、彼女とは不思議な出会いだった

。

 

「私、……死神なの。」

 

 はじめは心底驚いた。だって、どこからどう見ても普通の少

女だったんだから。白い羽が背中にあるってこと以外は。天使

かとも思った。だって、彼女は本当に清楚で、見とれてしまう

ほど綺麗だったんだから。

 

 笑顔の似合う、白亜の彼女。後光さえ垣間見るような彼女が

、……死神。

 その言葉を信じるにはかなりの時間がかかった。最後の決め

手は、懐から出した一本の鎌。形状からして剣にも見える。彼

女は近くにいた子猫にそれを振りかざした。

 

 思わず目を伏せたが、その心配もなかったようだ。そこにい

た猫はそのままの形を残して命だけを奪い取られていた。

 

「本当は、鎌って低級の死神が使うんだけど……。自分の力、

まだ使ったことがないの。……怖くて。」

 

 ああ、やっぱりこのひとも感情を持ってるんだな、と思った

。死神だって、感情を持っていて、殺すことに抵抗を持ったり

するんだな。もしかしたら、俺たちと同じように恋をしたりす

るのかもしれないな。

 

二人の間に、さわやかな風が流れてきた。それが、別れの合図

だった。

 

「それじゃ。いろいろ話せて楽しかったわ。また、機会があっ

たら会いましょう。」

 

 そう言って、彼女は消えるように俺の前からいなくなった。

 

 

 あれから、もう五年が過ぎたんだな。彼女は今どうしている

のだろう。

 

 

 冬が終わり、また春が来る。彼女に会えるという確証はない

のに、どうしても心のどこかで期待してしまう。

 

今年は……

 

今年は……彼女に遭えるだろうか。

 

 なぜか、今年はいつもの年より胸騒ぎが激しい。それは、今

年こそは彼女に遭えるということの前触れなのか、それとも…

…

 

 窓を開ける。そこから、あの時と同じさわやかな風が部屋の

中に流れてきた。

 

 そっと窓を閉める。部屋の中には風の残り香がいつまでも残

っていた。

 

 

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