INTRODUCTION』

 

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 「ほら、まただ、あいつ寝てる…」

後ろ指を差されつつ教室の一角で一人の不健全な男が堂々と爆睡している。アイツの神経は図太い。おそらくは大根並だろう。イビキは掻いてないが付近の生徒はさぞかし迷惑な存在だと感じているだろう。受験シーズン真っ盛りだというのにこういう楽観的な奴が目の前にいるんだから。

「ニノく〜ん…起きてるかぁ〜〜」

そう。こいつの名前はニノ。ここ、サウス・サン高校に在学している男だ。

「(寝たままで)ふぁい…起きてまぁ〜す」

「・・・・・・・」

呆れたのか寛大なる生物の先生はそれ以上言及しなかった。それが妥当な判断だろう。起こしてもおそらくはまた寝ることは分かっている。

 

ニノの生活は学校で睡眠時間をある程度確保し、家でパソコンやなにやらで遊ぶ、という本末転倒なライフスタイルをとっている。しかし学校で行われている生活時間調査の勉強時間欄にはなんと7時間という結果が算出されたことがあった。それは文型の中でもトップクラスを誇る勉強時間数だ。しかしある男がこれはおそらく睡眠学習(ニノにとってはただの睡眠におわる)の時間を加えたものなのではないか。という仮説を立てた。そして直接本人に確認したのだが彼は、

「いや・・・それは・・・その・・・・・じゃあ」

有耶無耶(うやむや)にしつつ逃げ去った。この行動があらわす真意とは、ニノが虚偽の事実(俺、勉強時間7時間だぜ!)ということを自ら否定したことになる。

 

 あのときからニノも懲りたのか、7時間などというトンデモナイ数値は書かなくなった。最近はクラスの平均値を行ったり来たりとしている。実際その時間さえもしているかどうかは怪しいところである。一説では家でなんか一分も勉強していないのではないか、ともいわれている。さすがに少しもしていないということは・・・・・・あるかも。いやいや少しはやっているはずだ(ということに期待する)。

 まあそんなことはどうであれ、ニノの問題として後で彼自身に降りかかってくるんだから・・・・・まぁどうにかなるだろう(そうか?)(たぶんね・・・・・たぶん・・・・・)。

 

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