『SHARP SHAPE』 8 ニノが部活へと行っていた頃だから結構昔のことだ。彼の自慢話を聞かされたことがあった。今回はそのことを書こうと思う。 ✚ ある休みの日であった。高校二年生のニノは先輩と遊ぶ予定が入っていた。入部当初から世話になっていた先輩で、何でも趣味関係で気が合うらしい。ちなみに私はその先輩のことが嫌いだ。なぜかと言われると何となく雰囲気に問題がある、と言わざるをえない。友達も少なそうだし、ちょうどいいからニノと組んでいたに違いない。せいぜい仲良くやってくれると周りにも迷惑がかからないだろう、と思ったら大間違いだった・・・・・。 ✚ 「先輩、車運転しっちゃっていいですかぁ?」 ニノが(多分)学校近くで先輩に突っかかっている。当然ニノは免許不携帯である。先輩もこのことを断るかと思いきや、 「ああ、いいよ」 とあっさり肯定してしまった。この時点で法律に引っかかってしまう。その前にまずニノに重大な問題があると言わざるをえない。 「じゃあ、乗りまーす」 「車の運転は大丈夫か?」 「ああ、楽勝っすよ」 「ならいいけど・・・・」 車は法律違反をしながら学校を去って行く。ニノは、運転は順調だったと言う。しかし、ことは約一キロも離れていない十字路で起こった。 「おい! ニノ! 前!」 ニノの運転する車は信号を半分無視した状態で狭い路地へと突っ込んでいった。道路交通法の優先権を考えれば考えられないことだ。そして、ちゃちな軽自動車はでかいワゴン車と衝突した。豪快な金属のひしゃげる音と重力がニノを襲った。 「うっ!」 ニノはこのとき相当ビビったに違いない。ニノの車はフロント部がぺしゃんこで、再起不能となっていた。情けないクラクションの音がずっと鳴り響いていた。対して白いワゴン車は前が少しへこんだだけで、何とかなるような傷だった。 「ニノ。早く降りろ」 不幸中の幸いだったのか怪我は双方無かったようだ。 「え? 何でですか?」 「とにかく早く!」 ニノは言われるがままに、ぽんこつの車両と呼べない鉄の塊から降りた。ワゴンの女性ドライバーは中から出てきて、ケータイで警察に連絡を取り始めたようだった。コレはどうみてもマズイ。 「ニノ、今回は俺が運転したことにしろよ。いいな?」 「ああ、ハイ」 ニノは反省という反省はしなかっただろう。「あ〜ぶっかっちゃったな〜」程度にしか認識しなかったに違いない。このときの心中を彼はこう語っている。 「いや、実際ぃ、車ん中にあった物のほうが警察に見られるんじゃないかと思ってぇ、そっちのほうが心配だった」 「あるもの?」 「そりゃあまだ手をつけちゃあいけないもの。ロムとか・・・」 「あ、そう」 とまあこんなやり取りだった。自分がやってしまったことの重大さを全く理解していない。いっそのことちゃんと警察に取り締まってもらって獄中で反省していただきたい。 警察が来て、先輩が全責任を取ることとなった。懲役は無いにしても、補償費などお金が死ぬほどかかるに違いない。ニノは責任逃れをまんまとやってのけ、先輩は警察へ、連行されることになった。ニノはそ知らぬ顔で帰っていったに違いない。いくら気に入らない先輩でも、このことだけは同情したい。 その後、ニノは先輩に謝りに行ったというが、本当かは怪しい。なんせお金の責任は取っていないというのだからずいぶん虫のいい話である。ここまで話がでかいと怪しむ余地がかなりあるが、悪い話だから大体はあっているだろう。でも今回の被害総額をみると 相手の車の修理費(バンパー・ランプ・フロントボディー)で約40〜50万円。先輩の(多分)中古車は50〜70万円。で、もっとも大きいのが減点だろう。詳しくは分からないが相当引かれたに違いない。あとは相手のドライバーがこの事故によりなんらかの損害を被った(仕事とか)とすればそれも補償しなければならない。多分そんなことは無かったとは思うが・・・。 てなワケでニノ一人が多大な迷惑をかけたということである。くだらないことで公的機関を働かせないでいただきたい。これらには我々の税金がかかっているのだ。今回はこれにて一件落着だったらしいが、ニノの矛先がいつ他のだれかに向けられる日が来るかと思うと恐ろしい話である。おそらくそのうち多大な迷惑をかける日がやってくるだろう。それが自分ではないということをただ祈るだけだ。そのためにも、深く関わらないほうが身のためかもしれない。皆さんも是非細心の注意をしていただきたい。今回の話の教訓はそんなところであろうか。 |
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